PANAM レーベルヒストリー

PANAM レーベルヒストリー



PANAMは、1970年3月に従来の演歌・歌謡曲とは異なる流れでの音楽、すなわちフォーク、ニュー・ミュージックの専門レーベルとして誕生した。このレーベルには、大まかに分けて3つの流れが見られる。

 まず1つめは、かぐや姫を発端とするフォーク系アーティストのヒット。かぐや姫は、1973年のアルバム『かぐや姫さあど』、そしてそのリカット・シングル「神田川」が“四畳半フォーク”として人気を馳せ共に大ヒットし、解散した75年までの5作と78年の再結成アルバムの計6作でオリコン1位を獲得した。そして、その解散後、南こうせつは、シングル「夏の少女」(77年)や「夢一夜」(78年)など生来の明るい楽曲から従来からの繊細な楽曲まで幅広くヒットを飛ばした。一方、伊勢正三は元・猫の大久保一久とデュオ「風」を結成、シングル「22才の別れ」やアルバム3作でオリコン1位となり、よりフォーク色の強い楽曲で多くのファンから支持された。
 そして、2つめは、イルカをはじめとする女性シンガーソングライターのヒット。イルカは、1975年3月にデビューし、同年末に発売したかぐや姫のカバー曲「なごり雪」が70万枚を超える大ヒット、アルバムも好評で、77年の『植物誌』(オリコン1位)をはじめ、70年代から80年代にかけて高セールスをキープした。また、イルカの妹分として、79年に沢田聖子がデビュー、アイドル的なルックスからも支持を広げ、82年には2枚のアルバムがTOP10入り。さらに、81年にはとみたゆう子がデビューし、透明感のある歌声が人気を集めた。
 さらに、3つめとして細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆が結成したティン・パン・アレー一派の参加。彼らはグループとして75年と77年に2枚のアルバムを発表、またソロとしてほぼ同時期に細野2枚、鈴木5枚、松任谷1枚のアルバムを発表している。さらに、76年には大貫妙子がソロ・デビュー、77年にはムーンライダースも移籍し、合計5枚の作品を発表している。これらのアルバムには、山下達郎、松任谷由実、吉田美奈子、坂本龍一、矢野顕子といった錚々たるアーティストも参加しており、まさに日本ニューミュージック界の聖典と呼ぶべき楽曲が多数生みだされているのだ。
 80年代後半からPANAMは、クラウンのJ-POP作品全体に記されていたが、1999年のかぐや姫の復活を機に、再び良質なフォーク、ニューミュージックを追求するレーベルとして明確に打ち出された。ともに30年以上のキャリアを積んでいる南こうせつやイルカのほか、女性シンガーのイノトモ、沢田聖子、小野真弓などが作品を発表している。
 以上の説明から、PANAMレーベルは、日本のフォーク・ニューミュージック界を代表するアーティストによる音楽的評価の高い作品、そして更にオリコン1位獲得が14作にのぼるというセールス的に長けた作品が多数あることがお分かりいただけたかと思う。実際に、1つのレコード会社内の1レーベルだけで、これほど質・量共に優れた作品が多数生み出された例は希少なのではないだろうか。だからこそ、この輝かしい歴史をいつまでも記憶にとどめておきたいし、また今後の更なる発展も願わずにいられない。

(音楽チャートアナリスト・つのはず誠)

かぐや姫 ■南こうせつ ■イルカ ■ ■山田パンダ ■伊勢正三
細野晴臣 ■大貫妙子 ■沢田聖子 ■宇佐元恭一 (順不同)