倉本 裕基
倉本裕基 インタビュー (2010年10月)
1.コンサートではどんな曲を演奏なさるのでしょうか。あるいはどんな種類の音楽が聴けるのでしょうか。
***これまで約25年間に渡ってリリースした多数のCDの中から厳選したオリジナル曲や、自身の本格的?演奏会用アレンジによるスタンダード曲などです。どれも3〜5分程度のわかりやすく聴きやすい曲ばかりです。オリジナル曲は、特に叙情性に焦点を当てたクラシック・ロマン派の音楽の小品といった趣で、日本・韓国・他の国々でも高い評価を頂いています。また、スタンダード曲についてもピアニスティックなアレンジを施し、楽しめるピアノ音楽になっています。ほかに、お遊びコーナーとして、その時節の話題を取り込んだピアノによるダジャレ?!の演奏トークも披露したいと思っています。***
2.倉本裕基さんのコンサートは、トークも楽しくアットホームのものと聞いていますがコンサートで心がけてらっしゃることはありますか。
***もちろん、ピアノに適した上質な音楽、ということが念頭にありますが、聴き手の皆様がリラックスできるようにできるだけ配慮します。言い方を変えると、一般にコンサートの客席に座っていると、時にある種の不安感が付きまといますね。例えば、些細なことのようですが、今やっている曲はプログラムのいったいどの曲なんだろうかとか、どこで拍手をしたらいいんだろうかとか、曲が長くて緊張した、などということです。これらを極力なくしたいと言うことです。進行具合がわかりやすいプログラムを作り、各曲にまつわるエピソードなどもお話しします。私の韓国での活躍(と自分で言ってしまっていますが)の報道で私を知って、コンサートにいらして下さるお客様もいらっしゃいますので、ソウルでのコンサートがいつもソウルドアウト(Sold Out) なんてしゃれではありませんが、その辺のことにも触れないわけにはいかないでしょう。***
3.大学の専攻が応用物理学と言うことですが、どういう大学生活だったのでしょうか。
***大学在学中は、もっぱら音楽(ポピュラー音楽の巷間でのピアノ演奏など)のアルバイトに明け暮れていました。アルバイトと言っても現場では特に学生であるという身分を明かすことなくプロとしてやっていましたので、音楽的実力が直ちに評価されてしまう厳しい世界でもありました。ポップス・ジャズ・ロック・演歌・童謡などピアノが関係するあらゆるジャンルの演奏の仕事を経験しました。東工大理学部修士課程(応用物理学科)を一応卒業して、音楽を専業とすることになったわけですが、この学科を卒業して総理大臣になった方(かた)もいらっしゃいます・・・。
4.CDデビューまでの道のりは平坦ではなかったのではと推察します。34歳でのCDデビューのきっかけは、どんなことだったのでしょうか。
***卒業後は、演奏の仕事が中心だったのですが、だんだんと編曲の仕事も舞い込んでくるようになりました。FM東京の「ジェット・ストリーム」という番組に関係したレコード制作会社が一時期ありまして、1985年にそのアレンジをお手伝いした時に自作の「霧のレイクルイーズ」と「パリ冬物語」が認められ、倉本裕基の作品が初めてCD化されました。(実は、本名の北野實での作品はそれ以前にもCDや楽譜となっています。)***
5.どのくらいの数のCDをリリースしているのでしょうか。
***現在流通しているものでも、30枚以上はあると思います。ほとんどのアルバムがオリジナル曲(約220曲)ですが、自分の好きな曲をピアノソロにアレンジしたアルバム「マイ・フェイバリット・ソング」のシリーズもあり、本年4月に第4集をリリースしました。韓国では日本文化開放があった1998年から現在まで15枚のCDが発売されています。こちらは全曲、叙情的なピアノをメインに据えたオリジナルです。***
6.韓国で絶大な人気を誇るとの記事をよく見かけますが、いつごろからそうなったのか、理由あるいは実情をお聞かせ下さい。
***98年に韓国でリリースした Reminiscence (日本版 同「追想」)、RIFINEMENT(日本版 同「パリが見た夢」)が大ヒットしました。クラシックやジャズの要素を持ちつつ、イージー・リスニングに近いが、それまでとは少々異なる新しいタイプの音楽(ニユー・エイジ・ミュージックという名称が今でも使われています)として、主に若い年齢層から圧倒的な支持を得ました。翌年99年5月、ソウル・アート・センター(芸術の殿堂)にて韓国での初めての演奏会が催されましたが、全2800席が完売となりました。その後も(12年間!)ソウルでのコンサートはすべて満員御礼となっています。
付け加えますと、2003年頃まではこのことを取り上げる日本のマスメディアはほとんどありませんでしたが、韓流ブームの到来で、韓国の話題を取り沙汰することが多くなったことと、2004年から日本での活動をし始めたRyu(冬ソナの数曲を作詞・歌唱)の伴奏のお手伝いをしたことから、やっと?日本でも私のことを取り上げてくれるようになりました。一方、多くの誤解を招いていることも事実ですが・・・。***
7.ドラマや映画の音楽は担当なさっているのでしょうか。そういったCDがありましたらお教え下さい。
***ドラマの音楽というと一般には主題曲ばかりが話題になりがちですが、作曲する方は効果音楽的な背景音楽も含め、たくさんの楽曲を作らなければなりません。90年代は日本にてドラマの音楽作曲を任されたことは随分とあり、背景音楽としてでなく純音楽として楽しめる曲を収録した「倉本裕基テレビドラマサウンドトラック集Ⅰ〜Ⅲ」ほか、のCDがあります。ただ実際問題として劇音楽の制作は、監督・プロデューサー・制作期間・予算など、すべての条件が揃わないと進行できません。2001年以降は、私自身が担当した劇伴奏音楽は、映画「ジェニファー〜涙石の恋」のみです。自慢することではありませんが、最近10年間は、純粋に楽曲を作り演奏しているわけです。時々<何々のドラマに曲を提供>などと書かれていることがありますが、私の楽曲をそれぞれの映像に適する場面で使っていただいた、というのが本当のところです。ドラマのために作る作らないということはともかく、86年ごろからは日本の各種の番組のBGMあるいはテーマに、また95年あたりからは韓国にても、私の音楽が採用され続けてきたことは大変嬉しいことです。***
8.韓国でのエピソードがありましたら・・・
***定期的に首都ソウル以外の地方都市を含めコンサートをやっていますが、それとは別個に、各種イベントに招待されることも多々あります。大鐘賞映画祭には二回(43rd,44th)ほど、プレゼンタとして参加しました。イ・ヨンエさん、パク・ソルミさんにもお会いでき、お二方から直接、私のCDを聴くだけでなく楽譜を購入し練習もしている、との嬉しいお話も聞けました。音楽家では世界的名ソプラノ、チョ・スミさんが「愛の記憶」を歌ってくれましたが、当初、楽譜の最後の小節に歌ではなくピアノ伴奏部の高い音が書かれたままでした。つまり歌わなくて良い音、というより高すぎて普通は歌えない音を、彼女は美しい声で軽々と歌ってしまいました。従って、そのままそういう曲と相成りました。今年の九月には、世界のアーティストが出演するアリランフェスティバルや、シン・スンフン氏のアルバムのレコーディングに加わってきました。***
9.ピアノをメインにした楽器編成でアコースティックなものに限っていますね。
***先ず、自分が弾ける楽器がピアノであると言うこと(笑)。は、さておき、生の楽器が良いホール(残響などが程よい)で演奏された時の、心地よさ、立体感のある響きは何物にも代え難いと思います。電子楽器やPA(拡声)システムが大変進歩した昨今であるからこそ、この音楽の原点、つまり<演奏者の弾いた楽音が直接、聴き手に伝わる>ことを大切にしたいと思っています。***
10.音楽的インスピレーションをどこから得るのでしょうか。
***<音楽する>つまり、音楽を聴く、演奏する、作曲編曲する、楽典を研究することを含め、これらすべて人間の営みです。ロマンスに浸りあるいはあこがれ、自然の美しさに感銘を受けるのは、人間である所以です。音楽的霊感の源泉は、私にとっても謎ですが、お答えとしては「ロマンス」「自然」ということにしています。でも本来は、古今の名曲の研究(単なる鑑賞でなく一歩踏み込んだ研究)だと思います。***
11.趣味がご旅行や写真と伺っていますが、
***若い時は、時間も先立つものもなく、留学は論外として旅行などもあまりできませんでした。仕事では各地に参りましたが、やはり仕事抜きで自由な時間が持てる旅行の方が、心と体のエネルギーになるようです。後に海外にも行けるようになり、その頃から撮影した写真のうち、目的に合うものが、CDのジャケットとして採用されています。たとえば、アルバム「コンチェルティーノ」のレイクルイーズ(カナダ)や「ピアノ・コンソレーション」の緑の芝と白い椅子(ドイツ)「アンソロジー」の紅葉{黄葉}(ルクセンブルク)です。「ユア・フェイバリット・ソング」の慶州{キョンジュ}近隣(韓国)の池の風景も気に入っています。***
12.音楽活動を通じて、感じることは何でしょう。これからの抱負などありましたら。
***幸いなことに、私の場合自分がやりたい音楽(つまり叙情的なピアノ曲)をしています。押しつけられた仕事でなく、自から進んで作っていますので、自分自身も食するために作る産地直送品であるといえます。これからも、親しみやすくかつ聴き手が自由なイメージを膨らますことのできる純粋な音楽を作り演奏して行けたらと思います。***









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